

田中森一 著
■ISBNコード: 978-4-344-41152‐4
■判型/総ページ数: 文庫/574ページ
■価格: 762円(税別)
■発売年月日: 平成20年6月10日 初版
■発行元: 幻冬社
“闇社会の守護神”“ヤメ検の悪徳弁護士”“山口組の番人”“空飛ぶ弁護士”と揶揄され、悪のレッテルを貼られたあげく、懲役三年の実刑に堕ちた辣腕の元特捜検事、田中森一の自叙伝。
574ページに及ぶボリュームの本書は大まかに三部の構成に分けられる。
前半は、著者が法曹の世界に入るまでの生い立ちが語られ、
検察官時代の出来事を語る中盤。
そして、後半は弁護士に転身して特捜に狙われるまでの半生を語る。
許永中や宅見勝、伊藤寿永光などの裏社会のヤクザや地上げ屋の人間、山口敏夫、安倍晋太郎などの政治家、そして官僚連中の人物像やバブル時代に起こった事件の内幕を証言していく。
小遣いに化ける選挙違反摘発のカラクリ、検察内部の妬みや僻み、同僚らのジェラシーや嫌がらせ、そして同和問題、在日問題など社会の暗部と、この国の官僚組織、会社組織、闇社会の絡みあいが描かれる。
弁護士に転身後、弁護顧問料が月1000万円とか、破格な御祝い代や御車代、節税の為に棟ごとの豪華マンション購入と7億円のヘリコプターを購入したり、ゴルフの掛け金が数億円になるバブル紳士達などの話、そして、中岡信栄という人物に群がる政治家、官僚、芸能人、ホテルのボーイに対する金遣いの凄まじいエピソードなど、バブル時代の享楽ぶりや常識からかけ離れた金銭感覚の麻痺ぶりは強烈である。
読後は著者に対して共感できる、できないと言う感想では括れない。
これまで司法や検察に抱いていた正義の砦に対する疑念が浮かび上がる内容が生々しい。
ただ、山口敏夫や安倍晋太郎、晋三親子等の表現がくどい部分が気にはなるけど、葬られていく事実を書き残した意味で言えば貴重な書物として後世に残るだろう。
司法や検察の役割が正義の為にあると思っている人は、今だにテレビや新聞など大手マスコミの発する情報を鵜呑みにする人が多い。
厚生労働省の村木厚子さんの冤罪事件で見るように、
佐藤優氏や鈴木宗男氏の逮捕、福島県前知事の佐藤栄作久氏に関する事件、植草一秀氏の事件、ライブドア事件、陸山会事件の小沢問題、遡ればロッキード事件もそうであるように、冤罪や汚名を押し付ける本当の“悪”が、この社会の根っこを今後も何食わぬ顔で跳梁跋扈し続けるんだろうと思う。
物事に対する疑念や関心、思考がなくなれば操り人形のごとく、魂のない人生を送るしかない。
真実は見方によってどうとでも受け止められるのであろうけど、正義に対しての見方、物事を公平に見るには常に意識して努力する必要である。
簡単そうであって難しいけれども・・・
印象に残るキーワード
「山口敏夫」
「検察を含め、法曹界におけるわれわれの仕事は、しょせんその“ドブ掃除”にすぎない」
「検事のままでどこが悪いの?検事として悪者をやっつけ、弱い人を助けてきたじゃない。」
「中村天風」
本書の採点 ★★★★
備考
★★★★★ 有数の傑作
★★★★ 読み応えあり
★★★ まぁまぁかな~
★★ 思ったより期待はずれ
★ ダメだ、こりゃ~
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