
昨晩のレイトショーは“おくりびと”を観賞
イクスピアリ
恥ずかしいくらいに、涙が止まらなかった。
本木雅弘扮する主人公、小林大悟はチェロ奏者。
所属していた都会の交響楽団の解散で、仕方なく大切なチェロを手放し、
妻と共に故郷の山形に戻る。
求職のなか、キャッチコピーに「旅のお手伝い」の求人広告をみつけた大悟は、
“NKエージェント”と言う旅行代理店だと思った会社へ気軽に赴くが、
ホントは“死”への「旅立ちのお手伝い」で遺体を棺に納める
「納棺師」と言う職業を、嫌々ながら始めることになる…
映画は、
死の儀式を美しく尊厳に見せ、様々な死と向き合うそれぞれの人生と、
夫婦の愛、親子の愛、家族愛のエピソードを交え、
山形県庄内地方の美しい四季を背景に生と死を描く2時間10分の人間ドラマ。
今回この作品で、「納棺師」がスポットを浴びたが、
現実には非情に過酷な職業のはずである。
映画の中でも妻から「汚らわしい」と言われ、
友人からもさげすんだ目で見られ、世間のこの職業に対する
差別意識と偏見をまの当たりにするが、映画全体は伊丹十三映画の
リズムのように、日のあたらない題材を随所にユーモアを散りばめ、
ユニークでオリジナルな脚本でよく練り上げたなぁと感心する。
そして、雄大な自然の中で、久石譲の音楽が映画の魅力を高めている。
題材が題材だけに映画全体情感を押さえ、本木雅弘と山崎努の
抑えた演技はもちろん、脇役陣の余貴美子、吉行和子、笹野高史は
それぞれ如何なく魅力を発揮している。
ただ僕個人の偏見かもしれないが、
広末涼子演じる妻の美香が用意した食事を目の前にしたシーンでは
広末涼子の役者としての限界を感じた。
作品に対する想いの伝えかた、もしくは表現の仕方次第で、
彼女は数段上の役者になれたんじゃないかな、とも思う。
峰岸徹が演じる表情は、台詞は無いが心に残る。
僕は、夢をあきらめ故郷の山形に戻った主人公とは逆に、夢をあきらめて故郷を離れた。
観終わった後、涙を拭い、もうひと頑張りして早く故郷に帰りたい気持ちが高鳴った。
キーワード
「石文」 「母親の手」 「白子、チキン」 「チェロ」 「銭湯」
採点★★★★
備考
100点満点で点数は★20点 ☆5点
★★★★★ 有数の傑作
★★★★ 見逃せない
★★★ 見応え充分
★★ 話題作だけど…
★ ダメだ、こりゃ…